緊張をコントロールする方法 ~「本番に弱いんだよなぁ…」と感じる方へ~

 すずかけLabo.取締役の徳丸です!

 今回は,資格試験本番で緊張をコントロールするコツをお話します。

 

 「自分,本番になると弱くて…」,「いざ試験が始まると,緊張で頭が真っ白になってしまって…」等といったお悩みに処方箋を出したいと思います!
 
 “本番に弱い”といっても,様々なタイプの方がいらっしゃると思います。例えば,
 
“普段から緊張しやすいタイプの方”

“模試は大丈夫でも,本番になると弱いタイプの方”

“ペーパー試験は比較的大丈夫でも,面接等,人前に出ると緊張してしまうタイプの方”

etc.


 もし,緊張をコントロールできれば,安心して本番に臨むことができますよね。それでは,そのコツについて一緒に考察してみましょう。
 


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【目次】

1.緊張をコントロールする方法は,“慣れ”ではなく,“準備”
2.緊張をコントロールするための“準備”
 ① 不安要素・状況の洗い出し
 ② ①に対する対処法を決める
 ③ シミュレーションする
 ④ 修正する
3.緊張と緩和~本番で最大限のパフォーマンスをするために~
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1.緊張をコントロールする方法は,“慣れ”ではなく,“準備”
 
 よく,「どうしたら本番で緊張しませんか?」と,眉毛をハの字にして質問してくる方に対して,「そんなもの慣れだ!」といった感じに返す方,少なくないと思います。たしかに,スポーツのように,たくさんの練習試合や公式戦等で場数を踏める場合は,その答えにも一理あります。しかし,資格試験や入学試験等の場合,「年に1回,多くて2回」,下手したら,「一生に一度だけ」という場合もあります。この場合に,「緊張は慣れだ!」といったアドヴァイスをするのは,ちょっと違いますよね。
 
 それでは,どのようにして,本番で緊張をコントロールしたら良いのでしょうか。当日だけ何か意識して行うというのでは,失敗してしまう可能性がとても高いです。そうならないためには,そもそもの試験勉強と同じく,“準備”をして臨むことが肝要です。
 
 そもそも,なぜ,本番で緊張して萎縮してしまったり,頭が真っ白になってしまったりするか,その原因を考えたことはありますか?細かく分析をしてみると,各々原因があるとは思いますが,要するに,本番は普段とは違う事態であり,これに加えて,本番では想定外の事態が生じることがあるからです。
 
 ここさえわかっていれば,あとは,本番は普段とはどう違うのか,ということや,本番で生じ得る想定外の状況とはどのようなことがあるかを,しっかりと“シミュレーション”し,その“対処法”を予め用意しておけばいい,ということになります。
 
 例えば,初心者の自動車運転の場合に置き換えて考えてみましょう。


※ ここまでのお話でイメージが湧いている方は,例え話が少しくどいかもしれないので,↓の「2」まで飛ばして読んでください。

 


[本番と普段の差異]

A:助手席にアドヴァイスやブレーキを踏んでくれる教官がいない
B:教習時には体験していない天候がある
etc.
 
[本番で生じ得る想定外の事態]

c:赤信号で交差点に侵入してくるドライバーや歩行者がいるかもしれない
d:執拗なあおり運転をしてくるドライバーがいるかもしれない
etc.
 
〈Aについて〉

 教習時には,運転中に注意すべき点や,公道でのイレギュラーな事態の対応,場合によってはブレーキを踏んで事故を未然に防いでくれる等,教官が様々なアドヴァイスやフォローをしてくれていたでしょう。ところが,いざ免許を取得して運転となれば,そのようなフォローをしてくれる教官はもういません。この場合に,自分一人の運転で緊張してしまう場合には,最初のうちは,運転歴が比較的長い両親や兄弟姉妹,友人等にお願いし,助手席に乗ってもらうことで,適宜アドヴァイスやフォローをしてもらえるため,緊張も和らぎ,落ち着いて運転できるでしょう。
 
〈Bについて〉

 ここでは,ひどい雨の日や雪,街灯の少ない場所等の運転があるでしょう。ワイバーやタイヤの状態を確認しておくことや,意識的にスピードを抑える,焦らないように予定よりも早く出発しておく等をしておけば,緊張を抑えて落ち着いて運転することができるでしょう。
 
〈cについて〉

 いくら自分が注意していても,無謀な運転をするドライバーや,歩行者ゆえに無茶をする人は少なくありません。そうだとすれば,たとえ自走方向が青信号でも,交差点の状況全体をきちんと確認する,やや徐行で侵入する等すれば,万が一上記のようなドライバーや歩行者がいても,落ち着いて事故を未然に防ぐことができるでしょう。
 
〈dについて〉

 あおり運転については,最近社会問題としても大きく取り上げられています。この場合,どんなに相手が理不尽であったとしても,落ち着いて自分の身を守ることが大切です。高速道路であれば,きちんと安全確認をした上で走行車線に移動し,相手の車を先に行かす,一車線しかない道路であれば,路肩や緊急停車用の場所にハザードを点けて一旦避難する,また,万が一停車させられたり,SAまで追いかけられたりしたら,その前にドアロックをしておく等,いろいろな状況を想定して危機回避をする方法を“準備”できます。このように,急なあおり運転による恐怖の中で,緊張状態に陥り,普段とは異なる運転状況になってしまったとしても,想定される状況とその対処方法を事前にシミュレーションしておけば,事故を防ぐことができるでしょう。

 

 
 ここでは,比較的身近な自動車の運転を例にしてみましたが,以下では,試験本番での緊張をコントロールするための“準備”について,一緒に考察してみましょう。

 

 
2.緊張をコントロールするための“準備”
 
 それでは,緊張をコントロールするためにはどのような“準備”をすべきか。大まかな手順としては,
 
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① 不安要素・状況の洗い出し
     ↓
② ①に対する対処法を決める
     ↓
③ シミュレーションする
     ↓
④ 修正する
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といった流れになります。
 

〈① 不安要素・状況の洗い出し
 
 この準備が一番大切になってきます。結局,極度の緊張状況に陥ってしまうのは,その原因を予め想定すらしていなかった,ゆえにその対処ができなかった,ということが多いからです。
 
 まず,みなさんそれぞれが受ける試験の日程表を横に置いた上で,場面毎に想定される不安要素とその状況をありったけ真っ白な紙に書き出していきます。特に,法科大学院入試や予備試験であれば,一日の試験時間が長く,司法試験に至っては,中日を入れて5日間も試験が続きます。当然,長期戦になる程,緊張をコントロール重要性とその難しさが増すので,ナメずに準備をしておくことが大切です。
 
 不安要素・状況について,例えばどのようなものがあるか。共通して想定されるものとしては,
 
(1) 一見してわからない問題(未知の問題)が出る
(2) 途中で誤った解答をしていることに気が付く
(3) 急な腹痛に襲われる
(4) よくわからないけど,落ちる気がしてたまらなくなる
(5) 周り全員“デキる人たち”に見えてしまう
(6) 隣の受験者がやたら机を揺らすクセがある
 
等々,いろいろあると思います。
 
② ①に対する対処法を決める
  次に,不安要素・状況をしっかりと洗い出したら,その対処法を決めておきます。極度の緊張感は,試験の空気だけでなく,試験時間という限られた状況の中で解答することが大きく影響します。そこで,想定外の状況を“想定内の状況”に事前に置き換えておき,それに対する“対処法を決めておく”ことで,迅速な判断と対応を行うことができます
 
(1) 一見してわからない問題(未知の問題)が出る
 これは誰しもが本番でぶつかる可能性が高い不安要素・状況ですよね。難関試験になればなる程そうだと思います。例えば,予備試験や司法試験の場合,短答式試験論文式試験に分けて想定する必要があるでしょう。
 
 短答式試験の場合,例えば,一見してわからない問題が,ある選択肢だけなのか,問題全体なのか,それが時間があればわかる問題なのか,「時間があってもわからない問題」なのかによって,対処法を場合分けすることが大切です。
 
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ア.「ある選択肢」の場合
 そもそも,ある一つの選択肢のみがわからない場合であれば,残りの選択肢の解答に自信があれば解けることがほとんどです。例えば,司法試験・予備試験の場合であれば,公法系の「1・2問題」と「◯×問題」のように全選択肢がわからないと点数がもらえない(ただし,1・2問題では部分点あり)場合を除き,他の選択肢の解答がわかれば,基本的には「正しい」又は「誤っている」肢の組み合わせを選べばいいので,特に問題視する必要はありません。
 
(ア) 「時間があればわかる問題」の場合
 その上で,「ある選択肢」の解答が必須の場合には,時間があればわかりそうだと感じたら,とりあえずテキトーにマークをし,問題にドッグイヤー等しておき,最後まで解答を超えて時間に余裕があれば戻ってきてじっくり考えればいいでしょう。
 
(イ) 「時間があってもわからない問題」の場合
 悩んでも仕方ないので,直感でテキトーにマークをすればいいでしょう。そこで時間を潰してしまい,最後まで解答ができなくなったり,焦ってケアレスミスをしたりするよりはるかにマシです。
 
イ.「問題全体」の場合
(ア) 「時間があればわかる問題」の場合
 そもそも,問題全体がわからなそうなのに,時間があればわかる問題とかあるのか,ということですが,例えば,司法試験・予備試験の場合であれば,相続分の計算問題等があり得るでしょう。ただ,解き方は決まっていますし,数字や図を余白に書き出したりすれば解けますし,少なくとも選択肢をかなり絞ることは可能です。このような場合は,テキトーにマークをした上で,最後まで解答した後に残った時間でトライしてみましょう。
 
(イ) 「時間があってもわからない問題」の場合
 この場合は,先程と同じで,悩んで時間を潰してしまう前にテキトーにマークをし,次以降の問題に集中しましょう。
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 要するに,短答式試験の場合,1問に極度に時間をかけてしまうこと自体が埋められない大きなミスに繋がることがわかります。それゆえ,小さなミスをひとまず見逃して,大きなミスを防ぐことが肝要ということがわかります。
 
 続いて,論文式試験の場合です。未知の問題が出た場合の対処法については,別のコラムでじっくりお話したいと思いますが,ここでは一つの対処例について提示したいと思います。
 
 論文式試験で一見してわからない問題が出た場合のポイントは3つあります。
 
1:設問をよく読む
2:原則として,法的三段論法を貫く
3:各法律の思考プロセスを固めておく
 
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ア.設問をよく読む 
 当たり前のことを言いやがって,と思うかもしれませんが,本番というものは本当に恐いもので,割とこの点が集中してできなくなることがあります。
 
 少し肩の力を抜いて考えてみましょう。例えば,「好きな国は何処ですか?」という質問に対して,「ハンバーガーです!」って答えたら,その質問に対する解答は0点ですよね(笑)。ここでは,「日本です」とか,「アメリカです」とか,「フランスです」等という答えが適切ですよね。
 
 次に,「その国が好きな理由は何ですか?」という質問がなされたとします。ここでは,「フランス」が好きな国だとしましょう。この場合に,「ワインが好きだからです」と解答したとします。この解答は,0点ではありませんが,満点は付きませんよね。なぜでしょうか。みなさんが質問者だとしたらこの解答に納得するでしょうか。例えば,こうはツッコみたくなりませんか,「いや,たしかにフランスはワインで有名だけど,イタリアやスペイン,チリにオーストラリア,ワインが美味しい国は他にいくらでもあるでしょ!」と。
 
 そうだとすると,「フランス」が好きな理由で「ワインが好きだから」だけでは,解答としては不足していることがわかります。すなわち,数あるワイン生産国の中で,「特にフランスワインが好きな理由」をきちんと述べなくては,点数は入ってきません。あとは,その理由が具体的かつ説得的であるか否かによって付く点数が変わってくることになります。
 
 一方で,質問内容が少し変わって,「その国が好きな理由は何ですか?食文化に関する理由以外で教えてください」と問われたとします。この場合に,先程のようにいくらワインが好きな理由を語っても0点なのは当然ですよね。ここでは,食文化以外の話,例えば,カルカソンヌの城塞都市シテに行き,その建築や雰囲気に感動した理由を具体的に述べる,といったことが考えられるでしょう(実際に昨年,独り旅で行って感動しました。余談ですが(笑))
 
 つまり,設問をよく読むということは,出題者が聴きたいことについてきちんと答えてあげるために必要ということになります。上記の例を堅苦しく言えば,論文式試験においては,設問の日本語きちんと読み取り,そこでの指示や誘導に忠実に従うことが大切,ということになります。相手の問いたいことさえわかれば,あとはそれに対して正面から答えていくのが最善の対処法です。
 
イ.原則として,法的三段論法を貫く 
 これもみなさん耳にタコができるくらい聞かされてきたと思います。しかしながら,試験本番でこれが崩れてしまう人は本当に少なくありません。その主な理由は2つあり,問題がわからないことと時間制限があることです。これらの要因に緊張と焦りが加わり,あんなに基本として叩き込まれてきた法的三段論法が何処かへ飛んでしまい,“作文”に変わってしまうのです。
 
 司法試験・予備試験の論文式試験において,法的三段論法は解答に当たっての“基本的なルール”です。法律以外の試験でも,例えば,英作文を課された試験であれば,設問の指示・誘導だけでなく,適切な文法(Grammar)に従うのが“基本的なルール”になると思います。ところが,試験本番でそのことを忘れて文法を無視し,単語ばかりテキトーに並べても合格点にならないのは言うまでもないですよね。
 
 どの試験にも,それぞれの“基本的なルール”があり,それを本番でも守るというのが大切になります。どんな状況下でも,原則としてそれを崩さず守り続けることを意識することが最善の対処法です。
 
ウ.各法律の思考プロセスを固めておく
 これも,いくつものコラムが書けそうなので,詳細はそちらでお話しますが,ここでも簡単な一例を提示します。
 
 例えば,大学で講師をしていた際に,多かった質問の一つに,「民事訴訟法の書き方が全然わかりません。」といったことがあります。刑法であれば,「罪責を述べよ。」というお決まりの問いですが(ちなみに,平成30年の司法試験は出題傾向がだいぶ変わっていたようなので一旦隅に置いてください。),民事訴訟法は,「訴訟上の問題点について述べよ。」等といった,一見すると何を書いたらいいか困ってしまうようにも思えます。
 
 前述の“設問をよく読む”を行うことを前提に,民事訴訟法で何が問われているのかを正確に見つけるコツが2つあります。一つは,レベル思考↑の写真)と第一審手続のタイムライン(↓の写真)を脳裏に置いておき,常に意識をすることです。

 

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民事訴訟法の思考プロセス(レベル思考)

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民事訴訟法の思考プロセス(第一審手続のタイムライン)

 
 言うまでもなく,民事訴訟法においても法的三段論法を守ることは必須です。しかしながら,民法や刑法のように,適用条文がきっちりとある法律とは異なり,民事訴訟法は,大前提である条文から始まれないことがほとんどです。そこで,条文に代わる大前提となるのが,原理・原則です。
 
 “レベル思考”の赤の楕円で示しているのが,特に重要な原理・原則になります。例えば,法律上の主張レベルの問いであるにもかかわらず,弁論主義を(ストレートに)持ち出してくるのはズレていることがわかります。問題文を読んでいく中で,今回の問いが“どのレベル”の話なのかを意識することが極めて重要になります。
 
 次に,かつて添削をしていた際にあったことなのですが,重複訴訟の禁止(142条)について問われている問題なのに,ガッツリ既判力について論じていた受講生がいました。その受講生は,重複訴訟の禁止や既判力についての基本事項についてはきちんと理解しており,知識に関しては,こちらが質問すれば一定の答えがきちんと返ってくる者でした(要するに,基礎知識は有しているということ。)。
 
 それでは,なぜその受講生が上記のようなミスをしたか。それは,“タイムライン”を意識していなかったことにあります。民事訴訟法は,手続法であるため,当然手続の流れ,時間軸,すなわち“タイムライン”がとても大切になってきます。先程の“レベル思考”が「どのレベル」の問題であるのかに対し,“タイムライン”は「いつの時点」の問題であることを意識する思考プロセスになります。同じ手続法でも,刑事訴訟法の方は,イメージがしやすく,何が問われているかがハッキリとわかりやすいため,仮に“タイムライン”を意識できていなくても解けてしまうことが少なくないのですが,民事訴訟法の場合はこれをしてしまうと致命的になることがとても多いです。
 
 “第一審手続のタイムライン”を見てみてください。これを見てみると,先程の受講生が意識できてなかったのは,「判決確定前」か「判決確定後」か,ということになります。「既判力」の定義を思い出してみてください。
 
既判力とは,確定判決の判断内容の後訴での通用性ないし拘束力をいう。」
 
 そうすると,判決が確定していないにもかかわらず,既判力が生じることはありえない,言い換えれば,判決確定前に既判力に反するか否かの問題を論じることは誤っているということになります(なお,念のために言っておくと,重複訴訟の禁止を論じる際に,既判力を意識することとは別です。)。
 
 以上のように,民事訴訟法においては,“レベル思考”と“第一審手続のタイムライン”という2つの思考プロセスを脳裏に置き,解答に当たって常に意識することが肝要になります。こんな感じで,法律の論文式試験の場合には,全科目に共通する“思考プロセス”と,各科目固有の“思考プロセス”を予め“準備”し,常にそれに従って解くことで,一見してわからない問題が出たときにも,緊張と焦りから来る大失敗を防ぐことができます
 
 なお,ここでも語学学習で置き換えてみると,かつて中学時代に,英語の未来形を習ったときに,「そういえば,たしか"will”と“be going to”とか何か2つあったなぁ…。」となったとします。何も準備していなければ,本番でどっちを使えばいいか焦っちゃいますよね。
 
 そこで,例えば,
 
〈will+V原〉
→ 自然のなりゆきで起きる場合,主語の意志を表す場合
 
〈be going to+V原〉
→ 主語に意図や計画があった場合,「~だろう」という推測を表す場合
 
といった感じで思考プロセスをまとめておけば,本番で課された英作文等に合わせてチョイスすればいいですよね。
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(2) 途中で誤った解答をしていることに気が付く
 (1)について,長くお話し過ぎましたね(苦笑)。ここからは,ごく簡単に対処法の例を挙げてみたいと思います。
 
 本番で(2)の状況になった場合,とてつもなく絶望的な気持ちになると思いますが,ここでは,本当に誤っているかということと残り時間と配点を意識することが大切です。特に大切なのは後者です。誤った解答を訂正するにしても,残り時間内に途中答案になってしまっては大失敗の危険性があります。この場合,本来書きたかった内容と量をぐっと抑える必要があります。その際には,“配点”を意識した上で,その比重が高いところを少しでも論じる,低そうなところは簡潔に,又は思い切って捨てるという判断も必要でしょう。
 
(3) 急な腹痛に襲われる 
 司法試験ではありませんが,私自身,法科大学院生のときに一度,定期試験でこれを経験したことがあります。その時は,問題量が極めて多かった演習科目だったので,「トイレなんて行っていたら,絶対途中答案になって単位を落とす」と思い,腹痛と闘いながらなんとか最後まで受けきったのですが,これが大失敗でした。結局,腹痛のせいで思考力が大幅に低下してミスを重ね,握力も低下して字もまともに書けず,しかもほぼ途中答案をしてしまい,結果,単位を落としてしまいました。
 
 後から思えば,この場合にしておくべき対処法としては,我慢せずにトイレへ行くべきだったということになります。2時間の試験でもし10分や20分ムダにしてしまったとしても,残りの時間集中して解けるならば,無理して2時間受け切るよりよっぽど良い答案が書けたはずです。あるいは,仮に司法試験のような大事な試験であれば,即効性のある腹痛剤等を準備しておき,試験監督からOKが出る場合には服用させてもらうといった方法もあるかもしれません(実際にできるかは試したことないのでわかりませんが,不安な方は安心材料になるでしょう。)。
 
 この手の想定外の事態は,普段健康な人ほど致命的になりかねないので,意外と意識してその対象法を“準備”しておくことが大切でしょう。
 
(4) よくわからないけど,落ちる気がしてたまらなくなる
 このような状況は,自信の無さに緊張が合わさって起きてしまうことがほとんどだと思います。この場合の対処法は,例えば,「今まで書いてきた起案の量を思い出す」というのはいかがでしょう。これも大学講師時代の話ですが,受講生たちに,法科大学院入試本番当日,もし緊張したり,変な落ちるイメージとか湧いてきたりしたら,「今まで書いてきた起案の量を思い出す」といいよ,という話をしました。その者たちは,幸か不幸かわかりませんが(笑),1年次から私に起案課題を課され,2年次以降はそれを制限時間内かつ初見で解き,通算すると数百通は書いていました。ぶっちゃけ,東大生や京大生,早慶等の学生でもそこまで書いている人は少ないのでは,と思っています。なので,それをこなしてきたこと自体が圧倒的にアドヴァンテージなんどよ,ということを話していました。実際,話を聴くと,法科大学院入学後に特にそれを実感してもらえているようです。
 
 時と場合によっては,“根拠のない自信”という力技もありますが,強靭なメンタルを有しているもの以外はやはり心許ないです。それならば,“根拠のある自信”を何か一つ予め準備しておく方が,本番では後押ししてくれることでしょう。
 
(5) 周り全員“デキる人たち”に見えてしまう
 これも結構あるあるじゃないでしょうか。この場合も,前述した(4)の対処法が活きます。ですが,これに加えて,例えば,“周りの人たちを勝手に格付け”する方法があります。
 
 試験の待ち時間とかに,試験官に怪しまれない程度に周りを観察し,「あ,あいつは金髪でめっちゃ髪遊ばせててなんかチャラいし,試験に対して真剣じゃなさそうだから落ちるな,OK」,「あ,あいつは1.5Lのコーラを持参してるな。たぶん糖分摂り過ぎで途中から頭働かなくなってミスするな,OK」,「むむむ,あの子はどすっぴん&メガネでサンダルとクッションを持参してる。これは本気だな。良い勝負ができそうだ。」等です。
 
 かなりふざけた対処法のようにも思えますが,こんなアホなことをしている間に,いつの間にかそこまで全員“デキる人たち”には見えなくなり,気が付いたらリラックスしているもの。そこが狙いです。
 
 ちなみに,この例は,あくまでみなさんそれぞれの「脳内でのみ」やってください。根拠のない決めつけで緊張をコントロールしているだけなので,決して口には出さないようにしましょう頭の中の考えは,どんなに酷いことでも言葉等に出して「表現」しない限り,絶対的保障ですから(笑)。←急に憲法の話w)
 
(6) 隣の受験者がやたら机を揺らすクセがある 
 これも少なからずありますよね。その人の問題もありますし,机自体が不安定な場合も想定できます。この場合は,机を変えてもらったり,紙を挟んでもらったりする。相手に対して,丁寧な言葉で軽く一言揺らさないようお願いする。試験中だったり言いづらかったりする場合は,遠慮することなく試験監督(や補助者)に伝えて対処してもらう等の方法があるでしょう。
 


〈③ シミュレーションする
 ①と②ができたら,それを実際に“シミュレーション”しましょう。といっても,模試スタイルで行うのは,時間的にも集中力的にも限界がありますし,むしろそのスタイルは設定した限られた回数の中で行う方が効果的です。
 
 それでは,どのように“シミュレーション”するかというと,頭の中です。頭の中で,不安要素・状況をイメージし,そのときに自分が決めた対処法を実践するイメージをするだけでOKです。大切なのは,せっかく想定外の事態を想定内の事態にできたとしても,本番で間違った行動をとってしまうことを避けることです。頭の中で何度も“シミュレーション”をすることで,スムーズに対処法を実践できるようになります。
 
 ちなみに,“シミュレーション”をする時間ですが,基本的にいつでもいいと思います。私の場合は,お風呂にゆっくり浸かるのが好きなので,その時間に他にすることがないのでよくその“シミュレーション”をしていました。ただし,寝る直前は控えた方がいいと思います。頭が変に働いてしまい,眠りにつきにくくなるからです。
 


④ 修正する 
 そして,①~③のプロセスを行った上で,修正すべき点が見つかったら直ぐにそれを修正することが重要です。修正すべき点を見つけられるのは,主に③のタイミングになると思います。特に,先程の頭の中でシミュレーションをするスタイルよりも,模試スタイルのシミュレーションの方が見つかりやすいと思います。いずれにせよ,1回目の①~③のプロセスで全て完璧な“準備”ができるわけではないので,きちんと“修正”をし,精度の高い対処法を“準備”しておくことが肝要です。
 


3.緊張と緩和~本番で最大限のパフォーマンスをするために~
 
 最後に,ここまでは“緊張のコントロール”についてお話をしてきましたが,実は“緊張感をゼロ”にしてしまうのも良くないです。緊張が与えてくれるのは決してマイナスなことばかりではないです。適度な緊張は,“集中力”というとても重要な要素を与えてくれます
 
 以前にテレビを観ていたときに,明石家さんまさんが,笑いで重要なのは,緊張と緩和やねん!とおっしゃっていました。これは試験でも同じことだと思います。
 
 極論で例えてみましょう。もし,試験会場とその状況が,
 
[A]
 自分の部屋,部屋着,裸足,ベッドの上,適温,監視なし
 
[B]
 大学の大講義室,会場いっぱいの受験生,静かな雰囲気,厳格な試験監督と補助員
 
 さて,どちらの会場で受験した方が良いパフォーマンスができるでしょうか。きっと,みなさん[B]の会場・状況だと答えると思います。
 
 学校や図書館だと集中して勉強ができるのに,家に帰ると全く勉強しなくなる方,いませんか。この違いは,上記の[A]と[B]の状況と似ていると思います。すなわち,がっつりとリラックスできる環境か,一定程度緊張感のある環境か,ということです。
 
 みなさんも,「今日めちゃくちゃ集中して勉強できたなー!」と感じたことがあると思います。それっておそらく,適度な緊張感が与えてくれる“最高の集中力”なのだと思います。例えば,塾の自習室で,話し声一つ無いものの,問題集を捲る音や筆記音だけが響き渡る中,自分もやらねば,とその雰囲気の中で勉強したとき等。
 
 一方,自宅派の人でも,部屋の温度を少し下げる,スマフォの電源を切る,ローズマリーのアロマを炊く,試験までの残り時間を意識する(≒締切効果)等を採り入れることで,リラックスし過ぎない適度な緊張感を保つことが可能でしょう。
 
 このように,緊張と緩和のバランスを保つことが,本番で最大限のパフォーマンスをするコツだと思います。

 


 
 さて,今回は,“緊張のコントロール”のコツについてお話をしてきました。かなりの長文になってしまいました。。。苦笑(^^;

 最後までお付き合いいただいた方,本当にありがとうございます!笑
 
 少しでもみなさんのお役に立てる内容があったら幸いです♪

 

 

 

すずかけLabo.

取締役  徳丸